電力と電力量

電力と電力量

電力量

ジュール熱』項で説明したジュール熱は、電荷の位置エネルギーの減少分が全て熱に変わった例ですが、たとえば、導線にモーターが接続されている場合は、位置エネルギーの減少分は、モーターによって力学的な仕事に変換されることになります。導線に電球をつなげれば、電気のエネルギーは光に変換されることになります。電荷の位置エネルギー(電気のエネルギー)は熱にだけ変換されるわけではありません。

このように、電気のエネルギーがする仕事(=電荷の位置エネルギーの減少分=電流のする仕事)のことを電力量といいます。

この電力量は『ジュールの法則』のところで示した

    W = IVt

のことです。単位も同じく [J] です。これが全てジュール熱になる場合、WQ に書き換えてジュールの法則の式となります。

電力

電流がする仕事を電力量というわけですが、電流が単位時間当たりにする仕事のことを電力(消費電力)といいます。電流のする仕事の仕事率のことです。世の中の電流というのは、絶えず流れ続けているものが多いです。このような場合、仕事の開始と終了が無いので、単位時間当たりの電流の仕事というものが重要な目安となります。

電力(電流が単位時間にする仕事)は、仕事率と同じように量記号に P、単位に [W] ワット を用い、電力量(電流がする仕事)W [J] を時間 t [s] で割って、

    P = \(\large{\frac{W}{t}}\) = \(\large{\frac{IVt}{t}}\) = IV

と表わします。電力というのは電流×電圧です。さらに、オームの法則 V = RI を用いると、

    P = IV = I2R = \(\large{\frac{\ V^2}{R}}\)

などと表わすことができます。

電力と電力量の式をまとめると以下のようになります。

電力

   P = \(\large{\frac{W}{t}}\) = IV (= I2R = \(\large{\frac{\ V^2}{R}}\))

電力量

  W = Pt = IVt (= I2Rt = \(\large{\frac{\ V^2}{R}}\)t ジュールの式と同じ)

電力の単位

電力 P [W] は電力量 W [J] を時間 t [s]で割ったものだから、[W] = [J]/[s] です。(電力の単位 [W] と電力量の量記号 W を混同しないように気を付けてください)

また、P = IV であり、I は電流 [A] で、V は電圧 [V] のことだから、[W] = [A]×[V] です。

さらに、P = I2R = \(\large{\frac{\ V^2}{R}}\) であり、Rは抵抗 [Ω] だから、[W] = [A]2×[Ω] = [V]2/[Ω] です。

まとめると、電力の単位は [W] = [J]/[s] = [A]×[V] = [A]2×[Ω] = [V]2/[Ω] です。

[k] キロ という単位を用いれば、1000[W] = 1[kW] キロワット です。

電力量の単位

同様に、電力量の単位は [J] = [W]×[s] = [A]×[V]×[s] = [A]2×[Ω]×[s] = [V]2×[s]/[Ω] です。

[h] 時(あるいはアワー)という単位を用いれば、3600000[J] = 3600000[Ws] = 3600[kWs] = 60×60[kWs] = 1[kWh] キロワット時きろわっとじ閉じる(あるいはキロワットアワー)です。この [kWh] という単位は家庭用の電気料金の徴収の際に使われています。日本の電気料金はだいたい 1kWh で22円です。1000Wのドライヤーを1時間使うと22円です。20Wの蛍光灯を24時間点けっぱなしにすると約10円です。
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