qH42D

一端を閉じた質量 M 、断面積 S の円筒を、内部に少し空気が残るように水中に入れ、底面を上にして静かに手を離すと、図4のように、円筒中の水面が外部の水面より少し下がった状態で、鉛直に静止した。外部の大気圧を P0 、水の密度を ρ 、重力加速度の大きさを g とする。円筒は熱を通さず、円筒の厚さは無視できるものとする。また、円筒内部の空気は、常に水温と同じ温度であるとし、その質量は M に比べて十分小さく無視できるものとする。

図 4

(問5)水温を測定したところ 15°C であり、円筒内の気柱の高さは l だった。その状態から、水温を 43°C まで上げた。このとき、気柱の高さは l の何倍になるか。最も適当な数値を、次の①~⑥のうちから一つ選べ。ただし、外部の大気圧は P0 、水の密度は ρ のままであるとし、水の蒸発は考えないものとする。

① 0.3  ② 0.9  ③ 1.1  ④ 1.5  ⑤ 2.2  ⑥ 2.9  

 

(問6)次に、図5のように円筒を鉛直に保ったまま引き上げると、円筒内の水面は外部の水面から h の高さまで上がった。このとき、手が円筒を上向きに支えている力の大きさを式で表わせ。

図 5

#センター11本試

(問5)
「円筒の厚さは無視できるものとする」ということなので、円筒の壁部分に浮力ははたらかないということです。

ですので、円筒の形は左図のようなものであると考えた方がイメージしやすいかもしれません。

それを踏まえて、円筒内部の空気の圧力(P' と置きます)を考えてみますと、

  P' = \(\large{\frac{Mg}{S}}\) + P0

となります。この式には温度に関わる量記号が含まれてません。円筒内部の空気の圧力は温度と無関係です。

また、円筒内部の空気は水温と同じ温度ということなので、水温の温度を上げたときの円筒内部の空気の温度は 43℃ であり、この温度になったときの気柱の高さを l' と置いて、ボイル⋅シャルルの法則の式(\(\large{\frac{p_1V_1}{T_1}}\) = \(\large{\frac{p_2V_2}{T_2}}\))を立てますと、

    \(\large{\frac{P'lS}{273+15}}\) = \(\large{\frac{P'l'S}{273+43}}\)

 ∴  \(\large{\frac{l}{288}}\) = \(\large{\frac{l'}{316}}\)

 ∴  \(\large{\frac{l'}{l}}\) = \(\large{\frac{316}{288}}\) ≒ 1.097222

答えは ③ 1.1 です。

 

 

(問6)
上向きの手の力を F 、円筒内部の空気の圧力を P'' と置きますと、今度は、

  P'' = \(\large{\frac{Mg}{S}}\) + P0 - \(\large{\frac{F}{S}}\)  ……➊

となります。 ここの地点の
圧力のつり合いを考えてみてください。

また、

ここの地点の圧力は P0 であり、

ここの地点の圧力は P'' + ρgh であり

高さが同じ地点の圧力は同じ(『水圧』項参照)であるから、

    P0 = P'' + ρgh

 ∴  P'' = P0 - ρgh

これを➊式に代入すると、

    P0 - ρgh = \(\large{\frac{Mg}{S}}\) + P0 - \(\large{\frac{F}{S}}\)

 ∴   - ρgh = \(\large{\frac{Mg}{S}}\) - \(\large{\frac{F}{S}}\)

 ∴   - ρghS = Mg - F

 ∴  F = Mg + ρghS

 

 

要は、手に掛かる力は

これだけということです。大気圧や円筒内部の圧力は無関係ということです。