qG7T1

図1のように、板を用いて水平な床の上に傾きの角 θ の斜面をつくる。板の表面は、物体の底面との間の摩擦係数が点Bより上の部分と下の部分で異なるように加工されている。この斜面上の点Aに置かれた質量 m の小さな物体の運動を考えよう。

図 1

(問1)斜面の傾きをゆっくりと大きくしていくと、点Aに静止していた物体が角度 θ = θ0 のとき滑り出した。θ0 が満たす式として正しいものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。ただし、点Aでの静止摩擦係数を μ とする。

 ① sinθ0 = μ  ② cosθ0 = μ  ③ tanθ0 = μ

 ④ sinθ0 = \(\large{\frac{1}{μ}}\)  ⑤ cosθ0 = \(\large{\frac{1}{μ}}\)  ⑥ tanθ0 = \(\large{\frac{1}{μ}}\)

(問2)次に、角度 θθ0 より大きな値に固定して点Aに物体を置いたところ、初速度 0 で滑りはじめた。点Bより上の部分での動摩擦係数が μ' であるとき、点Bでの物体の速さ v はいくらか。ただし、点Aと点Bの間の距離を l とし、重力加速度の大きさを g とする。

(問3)問2において、点Bを通過したあと、物体は斜面上のある点で静止した。点Bを通過する時刻を t0 とするるとき、速さ v の時間変化を表すグラフとして最も適当なものを、次の①~⑥のうちから一つ選べ。

      

#センター07本試

(問1)
摩擦角』で説明した通り、③ tanθ0 = μ です。

 

(問2)
(まず運動方程式を立てて加速度を求める)

物体に掛かる重力は mg で、運動方向の成分は mgsinθ で、それに垂直な成分は mgcosθ で、それと同じ大きさなのが垂直抗力です。

動摩擦力は動摩擦係数と垂直抗力を掛けたものであり、μ'mgcosθ です。

つまり、物体の運動方向に掛かる力は

  mgsinθ - μ'mgcosθ

です。

というわけで物体の加速度を a と置いて運動方程式を立てますと、

    ma = mgsinθ - μ'mgcosθ

 ∴  a = gsinθ - μ'gcosθ

 ∴  a = g(sinθ - μ'cosθ)

と加速度が求まります。

 

(等加速度運動の式から v を求める)
等加速度直線運動t を含まない式( v2 - v02 = 2ax )を立てますと、

    v2 - 02 = 2al

 ∴   v = \(\sqrt{2al}\)

     = \(\sqrt{2gl(\sinθ - μ'\cosθ)}\)

v が求まります。

 

(問3)
点Bを通過したあと静止した、ということなので、点B以降は減速運動をしたということです。

点B以前は、上で示した運動方程式

  ma = mgsinθ - μ'mgcosθ

の右辺において、μ'mgcosθ より mgsinθ の方が大きくて加速しましたが、

点B以降は動摩擦係数が大きくて(μ'' と置きます)

  ma = mgsinθ - μ''mgcosθ

の右辺において、mgsinθ より μ''mgcosθ の方が大きくて減速するということです。

加速、減速いずれにしましても加速の具合は等加速です。加速度は一定です。動摩擦力というものは外力や速度が変化しても一定です。それが動摩擦力の特徴です(少なくとも高校物理では)。

等加速ということは v の増え方、減り方が一定ということであり、v-tグラフの曲線は直線になるはずです。そうなっているのは①と②のグラフです。このうち②はおかしいです。t0 の(点Bを通過する)瞬間に速度がガクっと落ちています。これは下から上へハンマーで叩くようなことをしないと起こりません。変です。

というわけでグラフとして最も適しているのはです。

 

(余談)
ものすごく細かくてどうでもいい話をしますと、

点Bをまたぐ瞬間というのは、摩擦係数が μ' の場所と μ'' の場所が混ざっているわけですから、徐々に速度が変化するということになります。

v-tグラフの曲線の頂上は少し角が取れるはずです。

、、もちろん、こんな細かい話はこの問題では想定されておりません。問題文においてわざわざ「小さな」物体とされているのはそのためです。