qH7DA

 磁束密度 B の一様な磁場が、図1の紙面に対して垂直に裏から表に向かって加えてある。この磁場中に電荷 q (q > 0) 、質量 m の荷電粒子があり、磁場に垂直な面内で速さ v0 の等速円運動をしている。以下の問1〜5に答えなさい。解答欄には必要に応じて導出の過程を示しなさい。

図 1

(問1)等速円運動の半径と周期を求めなさい。また回転の方向は、図1の a または b のいずれであるかを答えなさい。

(問2)問1の等速円運動をしている状態に加えて、磁場に平行で一様な電場 E1 が加わった。電場が加わった時刻を t = 0 として、時刻 t (t > 0) における粒子の速さを求めなさい。

 

 次に、図2のように紙面に垂直な境界面をもつ3つの領域①、②、③の中を荷電粒子が運動することを考える。領域①と③ではそれぞれ図1と同様に、一様な磁束密度 B が加わっており、領域②では磁束密度が 0 である。また領域②では図2のように領域の境界面に垂直な電場 E2 が領域①から領域③の向きに加わっており、 領域①と③では電場が 0 である。電荷 q (q > 0) 、質量 m の荷電粒子を領域①と②の境界面上の点Pから、境界面と垂直に速さ v1 で領域①の向きに打ち出した。荷電粒子は領域①で円弧を描いた後、領域②を通過して領域③に入射し、領域③で円弧を描いた。領域①と③は十分広いものとし、領域②の幅は d とする。

図 2

(問3)領域③に入射するときの荷電粒子の運動エネルギー、および速さを求めなさい。

(問4)荷電粒子が領域③を通って最初に領域①と②の境界まで戻ったとき、点Pからの距離を求めなさい。

(問5)点Pから打ち出された荷電粒子は領域①から③の間を往復運動する。電場 E2 を調節することにより領域②から領域③へ粒子が入射する速さを 3v1 としたとき、この運動2往復分の粒子の軌跡を図示しなさい。

#神戸大17

(問1)

磁場中を進む荷電粒子ローレンツ力を受けますが、その大きさは

  qv0B

であり、求める円運動の半径を r として円運動の運動方程式を立てますと、

  m\(\large{\frac{{v_0}^2}{r}}\) = qv0B

 ∴  m\(\large{\frac{v_0}{r}}\) = qB

 ∴  r = \(\large{\frac{mv_0}{qB}}\)

また、周期T と置きますと、

    T = \(\large{\frac{2πr}{v_0}}\)  ω = \(\large{\frac{v}{r}}\) と

 T = \(\large{\frac{2π}{ω}}\) より

 T = \(\large{\frac{2πr}{v}}\)
= \(\large{\frac{2πm}{qB}}\)

回転の方向については、

フレミングの左手の法則を適用しますと、 b


 

 

(問2)
磁場に平行な電場が加わったということなので、電荷 q は紙面こちら向きに力を受けることになります。その力の大きさ   E = \(\large{\frac{F}{q}}\)
∴ F = qE

  qE1

で、この力で電荷 q は紙面こちら向きに加速されるわけですが、その加速度の大きさは運動方程式ma = F)の関係より、

    \(\large{\frac{qE_1}{m}}\)

であり、t 秒後の紙面こちら向きの速さ v = v0 + at

    \(\large{\frac{qE_1}{m}}\)t

であり、

この速さを v0 と合成しますと(三平方の定理より)、

   \(\sqrt{{v_0}^2+\big(\frac{qE_1}{m}t\big)^2}\)

 

 

(問3)
領域①の向きに打ち出された荷電粒子は右回りに円弧を描きます。(等速円運動)

このときの荷電粒子の運動エネルギーは

  \(\large{\frac{1}{2}}\)mv12

です。

その後、領域②において荷電粒子は E2 によって加速されます。加速して領域③に到達した瞬間の速さを v2 と置きますと、そのときの運動エネルギーは

  \(\large{\frac{1}{2}}\)mv22

ですが、

どのくらいエネルギーが増えたかといいますと、それは

    qE2d

です。荷電粒子は領域②において qE2 の力を受けて、d だけ進みます。qE2 × d の仕事をされて、その分エネルギーが増えます(速さが増します)。これは『あらい水平面を進む物体』や『qG7FA』の逆のような話です。摩擦力を受けたときは減速して運動エネルギーが減りますが、本問の場合は、力を受けて加速し、運動エネルギーが増えます。

ですから、領域③に到達した瞬間の力学的エネルギーは

    \(\large{\frac{1}{2}}\)mv22 = \(\large{\frac{1}{2}}\)mv12 + qE2d

となります。右辺が求める運動エネルギーの大きさです。(左辺は解答として不適です。自分で設定した v2 が含まれています。右辺は与えられた量のみで表現できています。)

そして、上式を解いて v2 を求めますと、

    \(\large{\frac{1}{2}}\)mv22 = \(\large{\frac{1}{2}}\)mv12 + qE2d

 ∴  mv22 = mv12 + 2qE2d

 ∴  v22 = v12 + \(\large{\frac{2qE_2d}{m}}\)

 ∴  v2 = \(\sqrt{{v_1}^2+\large{\frac{2qE_2d}{m}}}\)

 

 

(問4)
荷電粒子は領域①と③では円弧を描き、領域②では真っ直ぐ進むわけですが、問1を参考にしますと、
領域①での円の半径は

  \(\large{\frac{mv_1}{qB}}\)

であり、領域③での円の半径は

  \(\large{\frac{mv_2}{qB}}\)

であるので、点Pからの距離は

  2×\(\large{\frac{mv_2}{qB}}\) - 2×\(\large{\frac{mv_1}{qB}}\) = \(\large{\frac{2m}{qB}}\)(v2 - v1)

          = \(\large{\frac{2m}{qB}}\)\(\Bigg(\)\(\sqrt{{v_1}^2+\large{\frac{2qE_2d}{m}}}\) - \(v_1\)\(\Bigg)\)

 

 

(問5)
問1、問4で説明したように、円の半径は荷電粒子の速さに比例します。ですので、領域③での円運動の半径は領域①での半径の3倍になります。

また、領域③から領域①へ戻るとき、荷電粒子の速さは v1 に戻ります。領域②を進んでいる間、荷電粒子は qE2 の力を受け減速します。力学的エネルギー保存の式を立てると、

    \(\large{\frac{1}{2}}\)mv12 = \(\large{\frac{1}{2}}\)mv22 - qE2d

となります。問3の式と同等です。①→③の過程では qE2d だけエネルギーが増え、③→①の過程では qE2d だけエネルギーが減ります。

というわけで軌跡の図は以下のようになります。