重心の運動

運動量保存の法則が成り立つ場合の重心の運動

重心の運動

『運動量保存の法則』において説明したことですが、複数の物体があるとき、それらをひとまとめにして物体系と呼びます。そして、物体系内の物体同士が互いにおよぼしあう力のことを内力といいます。作用⋅反作用の力です。物体系の外からおよぼされる力は外力といいます。

物体系において、内力のみがはたらき外力がはたらかない場合、物体系の重心の速度は変化しません。つまり等速直線運動をします。慣性の法則がはたらくということです。

内力のみがはたらき外力がはたらかない場合というのは、運動量保存の法則が成り立つ場合です。つまり、運動量保存の法則が成り立つような場合は物体系の重心の速度も保存されるのです。

静止している物体が分裂した場合でも、2つの物体が結合した場合でも、あるいは3つ以上の物体の場合でも同様です。さらにいいますと、糸やばねでつながれた複数の物体内力として張力や弾性力がはたらく複数の物体です。
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においても、外力がはたらかなければその重心の速度は保存されます。

証明

このことを数式を使って証明してみます。

質量 m1 、速度 v1 の物体Aと、質量 m2 、速度 v2 の物体Bが、x軸上を(あるいはそれぞれの x成分が x軸上を)等速直線運動をしていて、衝突後それぞれの速度が v1' 、v2' になったとします。

衝突前の物体Aの位置を x1 、物体Bの位置を x2 としますと、その重心の位置 xG

    xG = \(\large{\frac{m_1x_1\ +\ m_2x_2}{m_1\ +\ m_2}}\)

と表せます。とある基準時刻からの時間を t としますと、x1x2 というのはそれぞれ x1 = v1tx2 = v2t ですから、上式は、

    xG = \(\large{\frac{m_1v_1t\ +\ m_2v_2t}{m_1\ +\ m_2}}\)

と書き換えられます。そして速度というものは変位(位置)を微分したもの、もっと乱暴にいうと変位を時間で割ったものだから、重心の速度 vG は、

    vG = \(\large{\frac{x_\rm{G}}{t}}\) = \(\large{\frac{m_1v_1\ +\ m_2v_2}{m_1\ +\ m_2}}\)  ……①

同様に、衝突後の重心の速度 vG' は、

    vG' = \(\large{\frac{x_\rm{G}{'}}{t}}\) = \(\large{\frac{m_1v_1{'}\ +\ m_2v_2{'}}{m_1\ +\ m_2}}\)  ……②

となります。そして今、運動量保存の法則が成り立っているのだから m1v1 + m2v2 = m1v1' + m2v2' です。よって①式右辺の分子と②式右辺の分子は等しく、つまり ①式 = ②式 です。すなわち、

    vG = vG'

といえます。