音波

音波

音波

空気中を伝わる波を音波(音)といいます。空気分子を次々に揺らして伝わっていく波です。この波が人間の耳の鼓膜を揺らすと人間はそれを音として感知します。あるいは、マイクロフォンの振動板を揺らすと波は電気信号に変換され、音が機械的に検知された、ということになります。

空気分子は横波を伝えることができず縦波しか伝えないので音波は縦波(疎密波)ということになります。気体、液体中を伝わる波は基本的に縦波です分子同士がつながっていないと横波は伝播しません。気体や液体は、押す、押し戻される、という動作は起こりますが、進行方向に垂直な方向に揺り動かす、という動作が起こり得ません。固体なら縦波も横波も伝播します。
チェーン状に繋がれたものは横波しか伝播しません。
糸電話が伝える音波は縦波らしいです。横波も少しは伝わるでしょうが。
ドミノ倒しは完全に縦波です。
電磁波(光波)はちょっと別物です。力学的な動作とは違います。音波は力学的な波で、電磁波は電磁気的な波です。

(追記:最新の研究で液体ガリウム中の横波音波が観測されたようです。将来教科書が書き変わるかもしれません。)
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。(水分子も横波を伝えることができず縦波しか伝えないので水中を伝わる波も縦波です。水面波は横波に似ていますが、厳密には表面波といわれていて、またちょっと別種の波です。)

空気中だけでなく、鉄などの固体中を伝わる波も音波と呼ぶならば、この場合は縦波も横波も伝わることになります。地中を伝わる地震波は縦波も横波もありますが、このときはあまり音波とは呼ばない気がしますもしかしたら呼ぶこともあるかもしれません。
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。音波と呼ぶのは可聴音の範囲内の振動の場合が多いと思います。可聴音より高い周波数の音は超音波電磁波でいうところの紫外線のような感じです。

しかし、「超音波」といっても何か特別な波というわけではなく、周波数(振動数)が大きい振動というだけのことです。音波歯ブラシとか超音波歯ブラシと銘打った製品が売られてますが、機能としては、振動する回数が多い、というだけのものです。電動歯ブラシ<音波歯ブラシ<超音波歯ブラシ、の順で振動回数が多くなります。値段も高くなります。
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と呼ばれ、指向性が高いので周波数が高い、つまり波長が小さく、あまり回折しないということです。反射波がボヤけにくくなり、鮮明な画像が得られます。レントゲンほど鮮明ではありませんが。
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、エコー検査などに用いられます。

広い意味でいうと、音というのは次々に伝わる振動のことです。もうちょっと厳密にいうとすれば、音というのは力学的な弾性波のこと、です。それに、空気中であるとか可聴範囲内であるなどの条件を付ければ、狭い意味での音、ということになります。

風、音、気温の違い

空気分子がこのように分布していると仮定したとき、

全体が動けばこれは、風が吹いたということです。

波が伝われば、音が伝わったということです。

各分子の振動が激しくなれば、空気の温度(気温)が上がったということです。


音の3要素

音の高さ

人間は周波数(振動数)の大きい音を高い音と感じ、周波数の小さい音を低い音と感じます。ピアノの鍵盤の真ん中のドの音の周波数が 261.6Hz くらいで、その5つ右の鍵盤のラの音の周波数が 440Hz です。人間の耳に聞こえるのは 20~20000 Hz くらいの周波数の音で、これを可聴音といいます。これより大きい周波数の音が超音波です。また、音楽をやっていた人はオクターブという言葉を知っていると思いますが、1オクターブ高い音ピアノの鍵盤でいうと、(白鍵において)7つ右の鍵盤の音。
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というのは周波数が2倍の音ということです。

音の強さ

音の強さとは、音波が運ぶエネルギーのことで、媒質の密度が大きいほど、振幅、振動数が大きいほど強い音となります。[db] デシベル という単位を使い、基準の強さを 0db とし、これの10倍のエネルギーを 10db 、100倍のエネルギーを 20db 、1000倍(=10の3乗)を 30db とするややこしい定義の単位になってますこの単位はあまりにもややこしいです。ややこし過ぎるので試験には出ないと思います。下記WEBサイトが詳しいです。
小学生でも分かるデシベル(dB)の話
http://macasakr.sakura.ne.jp/decibel.html
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。人間の耳に感じる音の大きさもほぼこのデシベルに比例しています。(昔はホンという単位も使われていましたがこの単位は廃止されるようです。またホンとは別にフォンとかソンなどの単位もあるらしいです。)

音色

同じ高さの音、つまり同じ振動数の音であっても楽器によって違う音に聞こえます。これは音波の波形が異なるからです。この音波の波形のことを音色(ねいろ)といいます。同じ高さの音でも、ピアノとバイオリンでは波形が違います。

音速

音波は加速できない

媒質を伝わる音波の速さ(音速)は、媒質の種類によって決まっていて、スピードUPすることができません。

たとえばドミノ倒しにおいて1番目のドミノを勢い良く弾いても、その勢いはせいぜい5、6番目のドミノまでしか伝わらず、その後は一定のスピードになります。

空気分子においても1番目の分子を勢い良く揺らしてもその後の波のスピードは速くはなりません。音速というものは分子たちの都合によって決まり、初速とは無関係です。

音の高さを高くしても、音の強さを強くしても、速くはなりません。(下で説明するように、温度を上げればわずかにスピードUPします。)

もし音速をUPさせたいのなら分子全体を動かさなければなりません。空気でいえば風を吹かすということです。このことはドミノに例えると、動くベルトコンベアの上でドミノ倒しをするというようなことです。

媒質による音速

ドミノ倒しにおいて、ドミノの間隔を狭くすると、伝わる波の速さがUPします。

音速も媒質がぎゅっと詰まっているような物質の方が速いです。空気より水、水より鉄の方が速いです。物質には3種類の状態、固体、液体、気体がありますが、音速の大きさは 固体>液体>気体 の順です。光波に関しては逆です。
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さまざまな媒質中での音速の値
媒質 温度[℃] 音速[m/s] 媒質 温度[℃] 音速[m/s]
空気(乾燥) 0 331.5 海水 20 1513
水蒸気 100 473 ヘリウム 0 970
23~27 1500 鉄(縦波) 常温 6000
氷(縦波) 0 3230 鉄(横波) 常温 3240
氷(横波) 0 1600 ガラス 常温 3000~6000

ヘリウムガスを吸って発声するとかん高い声が出るのはヘリウムの音速 970m/s の方が空気の音速 331.5m/s より速いためです。声帯を通過する気体の流速が意思以上に速くなり、意思以上に声帯を速く振動させます。
また、鉄の音速は 6000m/s もあるため、6000m の長さの鉄の棒があったとしたら、スタート地点でコンコンと叩いた音はゴール地点に1秒後には届いてしまいます横波は1.85秒後くらい。
(上の表より、鉄(横波)の音速は 3240m/s だから) 6000÷3240≒1.85
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。そのとき空気中を伝わってきたコンコンという音は約18秒後に届くということになります6000÷331.5≒18.1
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気温によって変化する空気中の音速

空気中での音速は、温度によって変化します。温度が高い方が空気分子が激しく動き回るので隣の分子に波を伝達するのが速いです。乾燥した 0℃ の空気中での音速は 331.5m/s で、1℃ 上昇するごとに 0.6m/s ずつ増加します。つまり t [℃]のときの音速 V [m/s] は以下のようになります。本当はこんな単純な式ではありません。あくまでも高校物理における式です。

空気の音速を表すときは、大文字の V を用いることが多いです。
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空気中の音速

 V = 331.5 + 0.6 t [m/s]

t = 15 [℃] のとき V = 340.5 [m/s] です。時速に直すと 1225km/h くらいです。この速さが一般的にいわれる マッハ1 という速さですマッハ1 というのは音速のことです。空気中だけとは限りません。水の マッハ1 は 1500m/s です。
固体の音速については マッハ という言葉は使わないと思います。
ジェット機が飛ぶような上空における マッハ1 は、気温が低いので 1200km/h くらいだったりします。あるいはもっと小さかったりします。ジェット機は マッハ1 の速度で飛ぶと様々な厄介な問題が発生するので、大抵 マッハ1 に達しない速度で飛んでいます。
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