剛体とは

物体には質量と大きさがあるものですが、大きさがなく質量だけがあるとみなしたものを質点といい、大きさも質量もあるとみなしたものを剛体といいます。

剛体の定義についてさらに付け加えると、剛体とは変形しないとみなせる物体、であります。逆に変形してしまう物体は弾性体といい、弾性力を考慮しなければなりません。厳密には世の中の物体はすべて弾性体なのですが、物理の法則を論じる上で考えやすいように、質点とか剛体とかいうものを考えます。

" 第3節 剛体にはたらく力 "では剛体について考えます。

剛体と質点の違いは、大きさがあるかどうかです。物理では、物体がどのくらいの速さで動くのか、どのくらいの力が加わったのか、ということを考えますが、物体に大きさがあるときはその物体が回転しているかどうかも考えます。これは、物体に大きさがないときは考えないことです。つまり、剛体と質点の大きな違いは、回転を考えるかどうかです。回転を考慮することが剛体を勉強する上での最大のポイントです。

3231-20-3a.gif力が剛体を押すとき、その力の作用線重心とずれてると、物体は回転します。

3231-20-4.gif力が質点を押しても、その力の作用線は自動的に重心を通り、質点は回転しません。そもそも質点に重心とか回転という概念はありません。

3231-10-1a.gif質点にはたらく複数の力は、その作用線が自動的に1点で交わりますが、

3231-20-1a.gif剛体にはたらく複数の力は、作用線が1点で交わるとは限りません。作用線が平行という場合があるからです。

3231-20-2a.gif左図のような場合、物体は回転します。

並進運動と回転運動

剛体の運動は、次の2つの要素に分類できます。

3231-30-1a.gif左図のような運動を並進運動といいます。

3231-30-2a.gif左図のような運動を回転運動といいます。

剛体の運動は、これら2つのうちのどちらかであるか、この2つの運動を組み合わせたものになっています。

3231-40-1a.gifちなみに左図のように移動した場合、

3231-40-2a.gif赤点を中心に回転しながら並進運動したともみなせるし、

3231-40-3a.gif青点を中心に回転しながら並進運動したともみなせます。

3231-40-4a.gifもっと極端なことをいえば、左図のように重心を中心とした回転運動でも、

3231-40-5a.gif赤点を中心に回転しながら並進運動したともみなせます。

回転の中心は任意の位置に設定できる、というこの考え方を覚えておいてください。

作用線の定理

3231-50-1a.gif3-2-1-1 力のはたらきの項で説明しましたが、力はその作用線上で移動させてもその効果は変わりません。力の大きさと向きが変わらなければ作用点を作用線上どこにでも動かせるのです。これを作用線の定理といいます。

3231-50-2.gif例えば左図のような2力がはたらいていても物体の動く方向は上方ですし、

3231-50-3.gif左図のような2力でも物体の動く方向は上方です。

(1)の場合も(2)の場合も物体の動く方向は同じです。赤の力と青の力の合力の大きさも(1)の場合と(2)の場合は同じです。(次々項参照)

気を付けてほしいのは、あくまでも作用線上を動かせるのであって、平行移動させてはいけないということです。3-2-1-3 力のつり合い の 【n 個の力のつり合い】 で示したアニメーションは、n 個の力の大きさと向きを比べるときに平行移動させてみると閉じたn 角形ができる、という説明であって、力の作用を考える上でこのような平行移動をすると異なった運動をすることになるので、平行移動はだめです。

力のモーメント

力が物体を回転させるときの回転力というものについて考えてみます。

3231-60-1.gif左図は左端の回転軸を中心に棒を回転させようとしている場面です。

左図のように外側部分に力を加えた場合と、

3231-60-2.gif左図のように内側部分に力を加えた場合では、どちらが力強く回転軸を回転させるでしょうか。

実は回転軸から離れている場合の方が力強く回転させることができます。

3231-70-1.gifビン詰めのジャムの蓋を開けるとき、蓋の大きさが大きい方が力が伝わりやすく開けやすいです。

3231-80-1.gifシーソーにおいて、同じ体重同士なら外側に座った方が有利です。真ん中の支点に対して大きな力を加えられるからです。

3231-90-1.gifてこの原理を思い出してください。小さい力でも支点から離れることによって重いものを持ち上げることができます。

このように、回転軸から離れる方が大きな回転力を生み出せるのです。回転軸に近づくと小さな回転力しか生み出せません。

次に力の向きについて考えてみます。

3231-100-1.gif左図のように力が回転軸の方に向いてしまったり、その反対方向を向いてしまっては回転力は生み出されません。

3231-100-2.gif回転軸の方向から直角の方向に向いてれば効率よく力が伝わります。

3231-100-3.gif回転軸の方向から45°の方向に向いていれば、力の内の 1/√2 しか回転力には使われません。(3-2-1-2 力の合成と分解参照)。

3231-100-4.gif左図のような場合、元々の力の大きさを F とすると、回転力として使われる力は F sinθ です。 F より小さくなってしまいます。(3-2-1-2 力の合成と分解の項の一番最後のFy に当たります)。

3231-110-1a.gifこれは別の考え方として、作用線の定理を使って、直角になるまで力を移動させて考えることができます。棒の長さを r とすると、回転軸からの距離は r sinθ になります。つまり力を移動させて考えた場合も、回転軸からの距離が短くなってしまうので回転力は小さくなってしまいます。(要は、F にsinθ を掛けるのか、r にsinθ を掛けるのかの違いだけで、実質的に同じということです)。

3231-110-2.gifこの r sinθ というのは、数学的にいうと、点と直線の距離であります。点と直線の距離というのは、点から直線に下ろした垂線の長さであります。剛体においてはこの距離のことを腕の長さ(=回転軸から力の作用線までの距離)といいます。

教科書によっては r sinθ ではなく、r cosθ と書かれてるかもしれませんが、これは θ の基準位置を変えただけのことで内容は全く一緒です。回転軸から半径 r が伸びる方向に θ の基準をとれば r sinθ ですし、半径r の円の接線方向にθ の基準をとれば r cosθ となります。どちらの場合も距離 r が縮まってしまうことを示しています。

以上まとめますと、回転力 = (力) × (腕の長さ) ということになります。この回転力を物理では力のモーメントといいます。別名、トルクといいますが、これは工学の分野において回転軸の位置が指定されてる場合に使う言葉のようです。

力のモーメントの大きさを M 、力の大きさを F 、腕の長さ r sinθ l 、反時計回り(左まわり)を正、とすると次のように書けます。

3231-120-1.gif単位は [N・m] (ニュートンメートル)(4-1-1-1 仕事 の補足参照)です。なお、M はmomentの頭文字です。教科書によっては M でなく N という量記号を使うこともあります。この場合はおそらくNewtonの頭文字です。 l はlength(長さ)の頭文字です。回転の向きの正負については反時計回り(左まわり)を正とすることが多いです。

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