摩擦力

3222-10-1a.gifつるつるのなめらかな面(たとえばスケートリンク)の上に置かれた物体は小さな力で動かすことができます。

3222-10-2a.gifざらざらのあらい面(たとえばコンクリート)の上に置かれた物体は大きな力でないと動かすことができません。

これは動かそうとする向きと逆向きに力がはたらいて邪魔をするためです。物体の下面と床面とのこすれ合いによるものです。この邪魔する力を摩擦力といいます。摩擦力は動かそうとする向きと逆向きにはたらきます。

3222-20-1a.gif摩擦力は、物体の下面の小さな凸凹と床面の小さな凸凹が引っかかることによって生じます。

3222-20-2a.gif凸凹がするどく突き出ているほど摩擦力は大きくなります。

3222-20-3a.gifまた、物体が重いほど摩擦力が大きくなります。床面に押し付ける力が強いほど摩擦力が大きくなるのです。

3222-40-1a.gifここでちょっと細かい話をします。細かすぎるのでスルーしてもらっても結構です。

床面に押し付ける力は、ミクロ(微細)な視点での物体の運動方向(右斜め上)とそれに垂直な(運動と無関係な)方向(右斜め下)に分解でき、運動と無関係な力を無視して考えると、残った運動方向の力は、水平方向の力に換算すると左図の青い力になり、これがまさに摩擦力であります。

3222-40-2a.gif山の角度が急なほど摩擦力は大きくなります。

(左図は大げさな例です。実際には、摩擦力押し付ける力より大きいようなことはほとんどありません。)

3222-40-3a.gif2段論法で解説せずに1段論法でいいますと、左図のようになります。床面に押し付ける力水平方向の力運動と無関係な力に分解でき、水平方向の力が摩擦力です。

要は簡単にいいますと、摩擦力の大きさは、どれだけ引っかかるか(山の角度等)、どれだけ押さえつけるか(物体の重さ等)、により決まります。

3222-20-4.gifそして、床面に押し付ける力というのは垂直抗力と大きさが同じです。向きは逆ですが。床面に押し付ける力と垂直抗力は作用・反作用の関係にある力です。

摩擦力を F 、凸凹の引っかかり具合を μ (ミュー)、垂直抗力(=床面に押し付ける力と同じ大きさ)を N とすると、

 F = μN  と表すことができます。

F はfrictional force(摩擦による力)の頭文字から、もしくは、ただ単にforce(力)の頭文字から。N はnormal(垂直な)の頭文字から。μ の語源は分かりません。)

このときの μ 摩擦係数といい、物体や床面の材質によって変わります。また、下で説明するようにこれには2種類あって、静止摩擦係数をただ単に μ 、動摩擦係数を μ' で表します。

3222-20-5a.gif上式には接地面積を表す記号が出てきません。接地面積と摩擦力は関係ないからです。接地面積が小さくなったとしても垂直抗力が同じ(左図でいえば重さが同じ)なら摩擦力も同じです。接地面積が半分になったとしても単位面積当たりの垂直抗力が倍になるのでトータルで同じになります。(これは F = μN が成り立っているときにのみ、いえることです。高校物理でのみ成り立ちます。実際の摩擦力は F = μN がなかなか成り立ちません。)

また、物理において、摩擦がある面をあらい面といい、摩擦がない面をなめらかな面といいます。問題文に「あらい面」と出てきたら摩擦力について考えなければなりません。

静止摩擦力

3222-30-1a.gif摩擦力が大きいときはなかなか物体が動き出しません。引っ張った分だけ引っ張り返されてしまいます。作用・反作用の法則です。このように、摩擦力のうち物体が動き出す前のものを静止摩擦力といいます。

引く力と静止摩擦力は同じ大きさなので、縦軸(y 軸)に摩擦力、横軸(x 軸)に引く力をとったグラフ描くと y =x の傾き45°の直線となります。

3222-30-2a.gif引く力をどんどん大きくしていってやっと動き出した瞬間の摩擦力を最大静止摩擦力といいます(単に最大摩擦力という場合もあります)。グラフの緑の点の部分の力です。

最大静止摩擦力を F 0 、垂直抗力を N とすると、

3222-50-1.gifと表すことができ、比例定数μ 静止摩擦係数といいます。あくまでも静止摩擦力が最大のときの係数です。この係数は「最大静止摩擦係数」と心の中で覚えてください。この式は上のグラフを表すものではありません。グラフは摩擦力引く力の関係を表し、この式は摩擦力垂直抗力の関係を表しています。

3222-30-3a.gif静止摩擦係数 μ とグラフの傾きも関係ありません。グラフの傾きは常に45°です。静止摩擦係数が大きくなる(凸凹の引っかかりが強くなる)ということは、グラフが斜め上へ伸びるということです。

3222-30-4a.gif同様に垂直抗力 N が大きくなる(物体が重いときなど)ということは、グラフが斜め上へ伸びるということです。

動摩擦力

3222-30-5a.gif動き出してからも摩擦力ははたらきます。動摩擦力といい、静止摩擦力と区別します。左図のグラフに示したように、いったん動き出すと摩擦力はガクッと小さくなり割りと楽に動かせるようになります。日常生活でも経験があると思います。その後、引く力を強めても弱めても摩擦力は変わりません。物体を引く速さを変えても変わりません。一定ですから最大動摩擦力というものはありません。これが動摩擦力の特徴です。タイヤとアスファルトとの摩擦など、動摩擦力が一定でない場合もありますが、高校物理では取り扱いません。後で学ぶ空気抵抗については本項の摩擦力とはまた別です。

動摩擦力を F ' 、垂直抗力を N とすると、

3222-50-2.gifと表すことができ、比例定数 μ' を動摩擦係数といいます。

3222-40-4a.gif最大静止摩擦力より動摩擦力の方が小さい理由は、筆者の個人的な予想ですが、動いているときは一瞬宙に浮くのでそのときに加速され勢いがつき、その分引っかかりに打ち勝つため、だと思います。

ここまでこのように凸凹の引っかかりを摩擦の原因として説明してきましたが、これらの話は肉眼で確認できるほどの凸凹がある場合であって、つるっつるのなめらかな接触面における微細な摩擦力については、ミクロの視点における分子間力というものが原因であると考えられています。

摩擦角

静止摩擦係数と床面の傾きには面白い関係があります。

3222-60-3a.gifあらい面の上に質量 m の物体が置かれています。この面を徐々に傾けていくとやがて物体はすべり落ちます。

すべり落ちない状態というのは、すべり落とそうとする力より最大静止摩擦力が上回っているので留まっているのです。徐々に傾けていって、すべり始める寸前で止めたときというのは、すべり落とそうとする力と最大静止摩擦力が等しくなった瞬間です。このときの傾斜角を摩擦角といいます。

3222-60-1a.gifこの問題において、すべり落とそうとする力(=最大静止摩擦力)は簡単に求まります。

物体には mg という重力(3-2-1-1 力のはたらきの一番下参照)がはたらいていて、その力を物体の運動方向とそれに垂直な方向に分解したときの、運動方向の力がすべり落とそうとする力です。三角関数を使うとそれは mg sinθ です。(3-3-2-3 斜面上の運動 参照)。そして今、すべり落とそうとする力と最大静止摩擦力が等しいので、最大静止摩擦力は F 0 =mg sinθ ということになります。

3222-60-2a.gif同様に斜面に押し付ける力も簡単に求まり、それは mg cosθ です。上で説明したように斜面に押し付ける力と垂直抗力は大きさが等しいので、垂直抗力は N =mg cosθ ということになります。

これで最大静止摩擦力 F 0 と垂直抗力 N が求まったので最大静止摩擦力の式に代入すると

3222-70-1.gif

3222-80-1.gif

tanθ というのは横の長さと縦の長さの比であるから、この式は、斜面の水平方向の長さ高さの比から静止摩擦係数が求められる、ということを意味します。また、角度を急にしてもなかなかずり落ちないということは静止摩擦係数が大きいということがいえます。

摩擦係数の例

 
  静止摩擦係数μ  動摩擦係数μ' 
鋼鉄と鋼鉄 0.7 0.5
ガラスとガラス 0.94 0.4

摩擦力のまとめ

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