3-2-2-1 弾性力 [前項へ] [復習へ] [Home] [次項へ]

【弾性力】

ばねを引き伸ばしたり、押し縮めようとすると元の自然の長さに戻ろうとします。このように、力を加えられた物体が元に戻ろうとする力を弾性力といいます。これも前項の作用・反作用の法則にのっとった力です。引っ張ろうとすると引っ張り返され、押し縮めようとすると押し戻されます。

この項では弾性力のうち特にばねの弾性力について説明します。ばねの弾性力の大きな特徴は、力の大きさがばねの伸び縮みの大きさとなって表われることです。物理では珍しく力の大きさが目に見えるのです。

3221-10-1a.gifしかも、伸び縮みの長さが弾性力の大きさにきれいに比例するのです。といいますか、そのように作られたばねが製品として世の中で売られているのです。ばね秤(ばかり)は、ばねの伸びの長さによって物の重さを表示する製品です。

ばねの伸び縮みの長さをx [m]、弾性力の大きさをF [N]とすると、

3221-20-1.gif

という関係があります。これをフックの法則といいます。力F が大きいほどばねの伸びx が大きくなります。17世紀にイギリスのロバート・フックという物理学者が発見しました。k [N/m](ドイツ語Konstantの頭文字)(ニュートン毎メートル)(単位の演算参照)はばね定数と呼ばれる比例定数です。そのばね特有の伸びにくさを表します。k が大きいばねは伸びにくいばねです。フックの法則をよく見ると、同じF ならk が大きいほどx が小さくなるとわかります。k は左図のグラフの傾きを表します。

3221-11-1a.gifしかし上式は厳密には不正確です。正負を厳密に考える、すなわちベクトルとして厳密に考えると、間違いなのです。

右向きを正とすると、変位x が正のとき、弾性力F の向きは左向き、すなわち負なのです。変位x が負のときは、弾性力F の向きは正です。ですので厳密なフックの法則の式は以下のようになり、グラフについては左図のようになります。

3221-21-1.gif

【ばねの直列接続】

ばねを2つ直列につなげると伸ばしやすくなるでしょうか伸ばしにくくなるでしょうか。

3221-30-1a.gif同じばねを3つ用意して、ばねが1つだけの場合とばねを2つ直列につなげた場合で比較してみます。どちらも20cm伸ばすとすると、フックの法則から、1つの場合の弾性力は F 1= 0.2×k [N] 、2つの場合は各10cmだけ伸びることになるから1つ当たりの弾性力は F 2= 0.1×k [N] 。

2つつなげた場合の弾性力は 2×F 2= 0.2×k [N] でしょうか。

3221-40-1a.gif違います。直列接続のばねを伸ばしたときには各部分にまったく同じ力がはたらいています。途中が F 2[N] ならどこもかしこも F 2[N] です。伸ばして静止した状態というのは力がつり合った状態です。ばねの各部分同士が同じ力で引っ張りあってるので静止しているのです。ミクロな視点でいえば、ばねを構成する原子たちがお互いを F 2[N] で引っ張り合ってつり合って静止しているのです。同じ力ではないということは力のバランスがくずれて物体が動くということになってしまいます。ばねが振動してしまっているときなどがそうです。

ばね以外でも、ピンと張って静止した1本の糸でも同様のことがいえます。端っこでも途中でもどの部分においても各部分同士は同じ力で引っ張り合ってつり合って静止しています。

このことは物理では良く出てきます。

というわけで2つつなげた場合の弾性力は 2×F 2[N] ではなくて F 2= 0.1×k [N] です。ばねが1つのときの F 1= 0.2×k [N] の半分です。2つつなげた方が伸ばす力がいらない、すなわち伸ばしやすくなったのです。このことは、ばねというものは同じ材質、同じ形状なら長い方が伸ばしやすい、つまりばね定数が小さいということを意味します。

3221-50-2a.gifではさらに、ばね定数が違うばねをつなげた場合はどうなるでしょうか。

それぞれのばね定数を k 1k 2、伸びを x 1x 2 とし、力 F で引っ張るとします。

それぞれのばねにかかる力は上で説明したように F だから、それぞれのばねでのフックの法則の式は3221-60-1.gif3221-60-2.gif、書き換えて3221-61-1.gif3221-61-2.gif

2つ合わせて1つのばねと見なしたときのばね定数を K としてフックの法則の式を考えてみると、このときの伸びは(x 1+x 2)だから、

3221-62-1.gif

両辺を F で割って3221-63-1.gif

すなわち 3221-64-1.gif

この式は電気抵抗の並列接続の式、あるいはコンデンサーの直列接続の合成容量の式とそっくりです。


【ばねの並列接続】

ばねを並列につなげた場合はどうでしょうか。

3221-70-1.gif重い荷物を持つ場合は2人で持てば半分の力で済みます。
3221-70-2.gif2人対1人で綱引きをすれば2人が勝ちます。

3221-31-1a.gifつまり同じばねを2つ並列につなげると、1つのときに比べて倍の力が必要です。ばねは伸びにくくなるのです。2つで1つのばねと見なしたときのばね定数は2倍になります。

3221-31-2a.gifでは、ばね定数が違う2つのばねを並列につなげた場合はどうなるでしょうか。(左図のような装置では実際に引っ張った際には硬いばねの方にワイヤーが片寄ってしまいますが、ここでは理論上、片寄らないで両方とも同じ長さだけ伸ばされることとします。)

それぞれのばね定数を k 1k 2とし、力 F で引っ張り、 x だけ伸びたとします。このときそれぞれのばねに加わる力を F 1F 2 とします。

それぞれのばねでのフックの法則の式は3221-65-1.gif3221-65-2.gif

2つ合わせて1つのばねと見なしたときのばね定数を K とするとフックの法則の式は F = Kx 。このF F 1F 2を合わせたものだから F = Kx = F 1+F 2

すなわち3221-66-1a.gif

よって 3221-80-1.gif


【張力】

3221-90-1.gifロープや糸やワイヤーをピンと張った時に引きちぎられないように踏ん張る力を張力といいます。(2-2-2-1 弦の振動 参照)。この張力もで説明したようにあらゆる部分に同じ大きさの力が働いています。左図のように1本のロープがピンと張っていて、滑車に摩擦がなく、ロープに重さがないとした場合には、たとえ直線でないとしても各部分の張力は同じ大きさです。ロープが1本ではなく二股に別れている場合は話が別ですが。

この張力も、(伸びが観測できないほど小さい)弾性力、とみなすことができます。しかしどちらにしろその根源は原子レベルでの作用・反作用の法則による力です。


【垂直抗力】

3221-3214-60-1a-3.gif前項の垂直抗力も、(伸びが観測できないほど小さい)弾性力、とみなすことができます。これもどちらにしろその根源は原子レベルでの作用・反作用の法則による力です。













[前項へ] [復習へ] [Home] [次項へ]


http://www.wakariyasui.sakura.ne.jp  Copyright © 2008 Rotton. All Rights Reserved.