3-1-1-1 変位と速度と加速度  [前項へ] [復習へ] [Home] [次項へ]

本項からいよいよ力学です。まず物体の運動の表現方法と言葉の意味を説明します。


【変位 速度 加速度】

3111-10-1.gif 物体が運動して位置が変わったとき、その位置の変化量を変位といいます。

3111-10-3a.gif 運動のスピードを速度といいます。

3111-10-4a.gif 左図の物体は途中から加速しています。加速の度合いを加速度といいます。


【ベクトル】

そしてここからは厳密な話をしますが、速度のことを速さといってはいけません。上の文でスピードのことを速度といってしまいましたが本当はよくありません。高校物理からはベクトルという概念が導入され、ベクトルであるものとベクトルでないものを明確に区別し、使い分けなければならないからです。数学でベクトルを習った方にはなんてことない話ですが、まだ習ってない方にベクトルについて説明しますと、ベクトルとは大きさと向きをもった量のことです。今まで量といえば、重さや長さといったものでした。これらには”向き”は定義されていません。このように大きさだけを表す量をスカラーといいます。対してベクトルは、下向きに10kgの重さとか、北西に10km離れた場所、というぐあいに大きさだけでなく向きの情報も付加された量なのです。表記するときもベクトルは量記号の上に矢印を付けて 3111-40-1.gif3111-40-2.gif というように書きます。スカラーは ax というように今までと同じように表記します。

高校物理で「速度」というとベクトルであり、「速さ」というとスカラーです。「変位」はベクトルで「移動距離」または「道のり」はスカラーです。変位がベクトルというのもわかりにくいですが、ただ単に「10m」といえばスカラーですが「北に10m」といえばベクトルです。しかし高校物理Iの範囲ではほとんどが直線上の運動しか扱わないので、ベクトルといっても右向きか左向きか、あるいは上向きか下向きか、というように正と負に置き換えることが可能な単純なものです。物理Iの範囲でも3-2-1-2 力の合成と分解では直線以外の方向も扱うので複雑になりますが。

3111-20-1.gif またベクトルは起点と終点しか問題にならず、途中経路のことは無視します。例えば、右に10m行ってから左に5m戻ってまた右に10m行った場合、移動距離は「25m」ですが変位は「右に15m」です。ベクトルは起点と終点だけで定義されます。

ベクトルスカラー
3111-30-haku.gif変位3111-30-haku.gif移動距離、道のり
速度速さ
加速度該当する言葉無し


【変位と速度と加速度の関係性】

速度は単位時間当たりの変位の変化量です。変位を時間で割ったものです。中学の理科で「速さは距離を時間で割ったもの」と教わったと思います。単位は [m/s](メートル毎秒)や [km/h](キロメートル毎時)。たとえば3[m/s]といったら1秒間当たり3mずつ変位が増える(移動する)という意味です。

加速度は単位時間当たりの速度の変化量です。速度を時間で割ったものです。これは中学の理科では習ってないと思います。単位は [m/s2](メートル毎秒毎秒)や [km/h2](キロメートル毎時毎時)。たとえば3[m/s2]といったら1秒間当たり3[m/s]ずつ速度が増すという意味です。


【グラフで表す】

3111-10-5a.gif 次に左図の運動をグラフにしてみます。右向きを正とし、1目盛りを1mとし途中の14目盛りまでは1秒に1目盛りずつ進み、その後1[m/s2]ずつ加速していくものとします。以下に、変位と時間の関係を表すx-t グラフ、速度と時間の関係を表すv-t グラフ、加速度と時間の関係を表すa-t グラフを順に示していきます。


x-t グラフ】

3111-50-1.gif 左図は変位と時間の関係を表すx-t グラフです。14秒までは 1[m/s]の一定の速度で進んでいき、その後 1[m/s2]の加速度で速度が増していき、19秒で34[m]の地点に達しています。

3111-50-2a.gif グラフの傾きが速度になるというのは中学の理科でも学んだはずです。14秒までは速度が一定なので傾きも一定です。その後 1[m/s2]の加速度が加えられていきます。 1[m/s2]というのは1秒に 1[m/s]ずつ速度が増すという意味です。時刻が15秒のときの速度が 2[m/s]になり、16秒のときの速度が 3[m/s]になり、17秒のときが 4[m/s]になり、18秒のときが 5[m/s]になり、19秒のときが 6[m/s]になります。

3111-50-3.gif 14秒までのグラフは直線なので傾きは簡単に導き出せますが、それ以降のグラフは曲線なので傾きを導き出すのは難しいです。数学によれば曲線の傾きはそれぞれの点に接する接線の傾きです。そしてそれはごくごく微小な変位差x をごくごく微小な時間差t で割ったものです。そしてこの傾きのことを瞬間の速度といいます。x はベクトルのはずなのに文字の上に→が付いていませんが、今は直線上の運動を取り扱っていて右向きを正と定めたので、x が正なら右向き、x が負なら左向きと定義できますので→は省略しました。

3111-60-1.gif
時刻が15秒のときの瞬間の速度が 2[m/s]であり、16秒のときの瞬間の速度が 3[m/s]であり、17秒のときの瞬間の速度が 4[m/s]であり、18秒のときの瞬間の速度が 5[m/s]であり、19秒のときの瞬間の速度が 6[m/s]であります。


v-t グラフ】

3111-70-1.gif 左図は速度と時間の関係を表すv-t グラフです。14秒までは 1[m/s]の一定の速度で進んでいき、その後 1秒ごとに速度が 1[m/s]ずつ増していき、19秒で 6[m/s]の速度になります。

3111-70-2.gif このグラフの傾きは加速度を表します。14秒までは傾きが0です。加速度が0ということです。14秒から19秒までは傾きが1です。加速度が 1[m/s2]ということです。左図は曲線ではないですが曲線の場合の傾きはそれぞれの点に接する接線の傾きであり、それはごくごく微小な速度差v をごくごく微小な時間差t で割ったものです。そしてこの傾きのことを瞬間の加速度といいます。
3111-62-1.gif


a-t グラフ】

3111-72-1.gif a-t グラフはあまり用いられることはありませんが、一応説明しておきますと、左図は時刻14秒までは加速度が0でそれ以降は加速度が 1[m/s2]であることを示しています。


【微分・積分】

変位、速度、加速度の関係は数学における微分・積分の関係を表します。数学で微分・積分を習ってない人は、いずれこの関係について学習することになるので頭に入れておいてください。(3-1-2-1 自由落下運動の項参照)

変位 →(微分)→ 速度 →(微分)→ 加速度

変位 ←(積分)← 速度 ←(積分)← 加速度

それぞれのグラフで接線の傾きを調べて瞬間の速度や瞬間の加速度を導きだすのは(微分)することに相当します。

3111-70-3.gif また速度を(積分)して変位を導きだすのは v-t グラフにおいて曲線とt 軸に挟まれる部分の面積を求めることに相当します。

大ざっぱに面積を計算すると x =1+1+1+1+1+1+1+1+1+1+1+1+1+1+2+3+4+5+6=34 となり、時刻19秒での変位は 約34m であることを示しています。

3111-72-2.gif また加速度を(積分)して速度を導きだすのは a-t グラフにおいて曲線とt 軸に挟まれる部分の面積を求めることに相当します。

大ざっぱに面積を計算すると v =0+0+0+0+0+0+0+0+0+0+0+0+0+0+1+1+1+1+1=5 となり、時刻19秒での速度の増加は 約5m/s であることを示しています。はじめの速度が 1m/s ですので時刻19秒での実際の速度は 1+5=6[m/s] です。


【平均の速度】

平均の速度というものを考えてみます。

3111-70-4.gif v-t グラフを見ながら大ざっぱに計算すると、平均の速度=(1+1+1+1+1+1+1+1+1+1+1+1+1+1+2+3+4+5+6)÷19=34÷19=1.79 となりますが、

3111-50-4.gif この計算は左図の x-t グラフにおいて赤線の傾きを求めることと同じです。一般的に始点と終点の変位差を経過時間で割るとその時間での平均の速度が求められます。左図の青線の傾きです。

3111-80-1.gif
v の上のバーは平均を表す記号です。この式を見ると平均の速度は途中経路によらないことがわかります。変位差と時間差が同じであれば途中で速度が減ったりしてもその後速度が持ち直して終点に到着しているはずだからです。


そして注意が必要なのが、高校物理からはベクトルの考え方が導入されていることです。

往きに時速40kmの速さで帰りに時速60kmの速さで家に戻ってきたとします。中学までの理科はスカラーでしたから、車の平均スピードは(往復の道のり)(往復の時間)で割ったものでした。

往きに掛かった時間をt [h] とします。

(往復の道のり) = 40[km/h]×t [h]×2 = 80t [km]
(ここで往復の道のり = 40[km/h]×t [h] + 60[km/h]×t [h] とすると誤りです。帰りの時間はt ではないからです。帰りの時間は 40t ÷60 [h] です。往きで確定している片道の距離 40t [km] を帰りの時速 60[km/h] で割ったものです。帰りの方が時速が速いので短い時間で済みます。帰りの道のりは 60[km/h]×(40t÷60)[h] = 40×t [km] なのです。ですので往復の道のりを 40[km/h]×t [h]×2 としたのです。中学理科の有名なひっかけ問題です。)

(往復の時間) = t [h] + (40t÷60)[h] = (100/60)t [h]
(上記の注意のようにひっかけポイントにハマらないようにしてください。)

よって車の平均スピードは
(往復の道のり)÷(往復の時間) = 80t [km] ÷(100/60)t [h] = 4800/100[km/h] = 48[km/h]
であります。往きが時速40kmで帰りが時速60kmだから足して2で割って時速50kmだ、と考えてしまうと、ひっかけポイントにハマったことになってしまいます。往きの方が車を運転している時間が長いので平均の時速は往きの値に近くなるのです。

と、ここまでが中学理科での平均スピードの求め方ですが、高校物理からのベクトルを導入した考え方では平均速度は 0[km/h] です。なぜなら変位が 0 だからです。ベクトルの変位は始点と終点のみで決まります。途中経路は無関係です。ですのでベクトルの考えを導入すると平均速度は 0[km/h] です。このことに注意してください。


【平均の加速度】

平均の速度と同じように平均の加速度というものを考えてみます。

3111-72-3.gif a-t グラフを見ながら大ざっぱに計算すると、平均の加速度=(0+0+0+0+0+0+0+0+0+0+0+0+0+0+1+1+1+1+1)÷19=5÷19=0.263となりますが、

3111-70-5.gif この計算は左図の v-t グラフにおいて赤線の傾きを求めることと同じです。一般的に始点と終点の速度差を経過時間で割るとその時間での平均の加速度が求められます。左図の青線の傾きです。

3111-80-2.gif
この式を見ると平均の加速度は途中経路によらないことがわかります。速度差と時間差が同じであれば途中で加速度が減ったりしてもその後加速度が持ち直して終点に到着しているはずだからです。


【加速度の正と負】

直線上の運動で加速度が負というのはどういうことかがわかりにくいと思うので説明します。今、直線において右向きを正とします。

3111-10-1.gif 物体が右に移動したら変位は正です。左に移動すれば変位は負です。

3111-10-3a.gif 右に向かって進んでいれば速度は正です。左に向かって進んでいれば速度は負です。


3111-10-4a.gif 右に向かっていたものが更に勢いを増して右に進めば加速度は正です。

3111-10-6a.gif 左に向かっていたものがスピードを落とし逆方向に向かい始めれば加速度は正です。

3111-10-7a.gif 右に向かっていたものがスピードを落とし逆方向に向かい始めれば加速度は負です。

3111-10-8a.gif 左に向かっていたものが更に勢いを増して左に進めば加速度は負です。

正の方向に持っていこうとする念力のようなものが正の加速度で、負の方向に持っていこうとする念力のようなものが負の加速度です。上図のアニメーションではロケットエンジンの炎が目安になると思います。

また、本項の上で示してきたグラフは加速度が正のときのものです。加速度が負のときのグラフはかなり様子が違ってきます。次々項で説明します。


【単位の演算】

ここまでの話で、単位に着目すると単位も一つの量記号であるかのように演算できることにお気づきでしょうか。

3111-90-1a.gif

このような法則が物理での計算のコツなので覚えておいてください。











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